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その原理の使い方

使い方によって、違う塩

この『いろいろな「塩」の違いとは?』の最初のページ「TOP・・・はじめに」で、以下のように書きました。大事なことなので、繰り返して引用します。

「製法」とは、例えば天日で作れば「天日製法」、釜で焚けば「釜焚き製法」ですが、それらは製造工程の一コマを切り取っただけの表現なので、「天日製法ならこの味(成分)に」また「釜焚き製法ならこの味(成分)に」とは限りません。

海水を天日で濃縮している一コマの風景は「天日製法」、釜で焚いている一コマは「釜焚き製法」です。しかし、肝心な出来上がる塩の成分・味というものは、その一コマで決まるものではなく、海水の濃縮から収穫そしてその後の工程という全工程の中で決まってきます。前のページの「塩作りの原理」は、ある成分を含めるためにも使えるし、逆に含ませないためにも使えるからです。

例えば、カンホアの塩は、海水の成分を『全体的に』取り込みながら塩の味を作ることで、『海のような深く豊かな味わいにする』という考え方です。ですから、様々な成分をそれぞれ適度に取り込んでいくために、その原理を使います。

一方、「ナトリウム分だけを採ろうとする一般の天日塩作り」では、ナトリウム分だけを採るため、つまり、カルシウム分カリウム分マグネシウム分が含まれないようにするためにこの原理を使います。例えば、カルシウム分が析出を終えた25%から塩を採り始め、また、27〜28%以降ナトリウム分とともに含まれるカリウム分マグネシウム分は、ナトリウム分よりも溶けやすい性質を使って、「塩を洗う」ことで落とします。その具体的な製造工程については、下の【参考ページ】をご覧ください。

【参考】天日製法とは?

塩の出来方の原理はもちろん共通ですが、その使い方が違うと、違う成分・味の塩が出来上がることになります。現在、世界の天日塩の生産では、上記のようにナトリウム分だけを採ろうとする製法が圧倒的に主流です。それは大量に効率よく生産出来るから。その背景には、日本を含めた世界の国々の工業化があります。これは塩自体の説明とはやや離れるので、ご興味のある方は、下記の【参考ページ】をご覧ください。「いろいろな塩の違い」の説明の続きは、次の「ここまでのまとめ」へお進みください。

【参考】食べる塩と食べない塩

ここまでのまとめ

  1. 海水の塩分(約3.4%)には塩辛いだけでない様々な成分が含まれている
  2. それらの成分は、味はもちろん、性質(溶けやすさ・固まりやすさ)も各々違う
  3. よって、海水を濃縮すると、それらは固まりになる(析出する)タイミングが各々違う

ここまで、だいたい上の3つのことを説明してきました。これからはその応用編になります。具体的な「製法」そして「原料」の違いによってどんな成分・味の塩になるか。それを次のページから説明したいと思います。

具体的な塩の違い

一般の天日塩作りで「塩を洗う」って、どうするの?

washing_salt

「塩を洗って溶けないの?」とお思いになる方、ごもっともです。でも、ナトリウム分だけを残すために、とてもうまく洗える方法があります。右の写真は実際に洗っているところ。カンホアで作られている一般の天日塩です。(カンホアの塩ではありません)

各成分の味と性質」のページにもあるとおり、カリウム分マグネシウム分は最も溶けやすく、ナトリウム分はそれらより溶けにくい。この性質を使います。それにはまずナトリウム分(NaCl)の飽和水溶液(それ以上NaClが溶けない程濃いNaClの塩水)を用意し、それで塩をザブザブ洗います。そうすると、ナトリウム分(NaCl)は溶けずにそれより溶けやすいカリウム分マグネシウム分が溶け落ちます。また「洗う」ことである程度の夾雑物も洗い流します。ベトナムを含め、天日塩は洗われるのが一般的です。

ちなみに、カンホアの塩は洗いません。専用の天日塩田で作り上げた味をそのまま天日干しして袋詰め。だから夾雑物は目と手でひとつずつ取り除いています。これも専用の天日塩田で作り上げた「海のような、深く豊かな味わい」をそのまま塩にするため。いくらおいしいと思う塩を塩田で作っても、その後の工程によっては、成分・味が変わります。塩作りは、隅々までの工程で最終的な味が決まるのです。「天日塩」とは「天日製法で作られた塩」ですが、「洗う」工程があるかないかだけでも、最終的な成分・味は異なってくるのです。